ヨーロッパの国のガイドブックを見ていると、教会と大聖堂っていう単語がよく出てきます。
- 大聖堂と教会って違うの?
- 大聖堂は大きい聖堂のことでしょ。
って思った方、この記事をちょっと読んでみてください。
この記事ではフランス政府公認ガイドのイーノーが、
- 大聖堂と教会の違い
- 教会の意味
を少し深堀りします。
フランスのキリスト教でマジョリティーを占めるカトリックをベースにまとめました。
大聖堂や教会の違いを知っているだけで、フランスやヨーロッパの旅がさらにおもしろくなります。
最後までお楽しみください。
大聖堂と教会って違うの?
人に聞かれると意外と「ううっ」となってしまうこの質問。
ズバリ、
大聖堂は教会です。
大聖堂は司教さんがいる教会
でも、大聖堂と教会、名前が違うんですから何か違いがあるんでしょ?
もちろん、あります。
大聖堂は司教さんが仕切っている教会のことなんです。
「カテドラル」っていう名まえを聞いたことありませんか。
これは、大聖堂を表すフランス語や英語読み(仏 : Cathédrale 英 : Cathedral)をカタカナにしたものです。
カテドラルの語源はラテン語のカテドラ(Cathedra)。
司教さんが座る椅子です。その椅子を司教座と呼びます。
カテドラがある場所が大聖堂(カテドラル)なんです。
司教座(カテドラ)は大抵こういう重そうな椅子↓
フランス語でシエージュLe siègeは椅子のこと。
でも、同じ単語が会社の本社も表します。
会長の椅子がある場所、それが本社なんですね!
常に椅子がポイント!
大聖堂は大きな聖堂ではない
教区というキリスト教の行政区ごとに1人司教さんがいます。
だから、教区に絶対1つの大聖堂(カテドラル)という司教さんの居る教会があることになります。
というわけで、
「大きい聖堂だから大聖堂」というわけではありませんでした。
教区という大きな区域を仕切っている教会だから、結果的に大きい聖堂になった、が正しいです。
教会とは?
さて今度は「キリスト教の『教会』って?」という、そもそも論を書きます。
教会の語源
教会の語源はギリシャ語の「エクレシア」ekklesiaです。
「人々の集い」を意味しています。
日本語では教える会って書くけど、
フランス語では「エグリーズ」église 。 なんとなくekklesia 「エクレシア」に似てますね。
教会の意味は実は2つ
「教会」って聞くと建物を思い起こすのが普通です。
でも実は、教会の意味は2つあります。
- キリスト教信者の集まり
- キリスト教信者が集まる場所
この記事で使う「教会」は、「場所」をさしていると思ってください。
日本語で「教える会」と書くのは、キリストの教えを教える場所だから。
中世のフランスは、教会は現代のように静かな場所ではなかったようです。
- ご飯食べる人
- 井戸端会議する人
- ペット連れてくる人
- 商取引するひと
なんでもありだったみたい。
公民会のような役割でした。
祈りを捧げる場所は奥の方にリザーブされていました。
今は教会でお弁当食べたり、大きな声で話たりしていたら、絶対に怒られます。
大聖堂と教会の差がクリアーになる「教区」と「小教区」
さっき、さり気に使った「教区」という言葉、ちょっとだけ、その辺を説明しておきます。
「教区」とか「小教区」はキリスト教の行政区の呼び方です。
都道府県みたいな感じ。
キリスト教は巨大な組織なので、ちみつに組織だてられています。
教区を治める大聖堂
フランスでは、大体、県ぐらいの大きさが1つの教区(あるいは司教区とも呼ぶ)です。
教区の責任者が司教さん。
司教さんのいる教会が大聖堂
大聖堂のある町が司教座都市。
県庁所在地みたいなニュアンスです。
- 教区にある司教さんのいる教会が大聖堂
- 大聖堂のある都市が司教座都市
小教区にある教会
教区の下の単位が小教区です。
教区にはいくつもの小教区がはいっています。
フランスだと日本の小学校の学区くらいの大きさ。
小教区ごとに1つ「教会」があります。
そして教会の責任者が司祭さんと呼ばれる人。
司教じゃないですよ、司祭。
ヒエラルキー的に表現すると、司祭さんは司教さんの部下にあたります。
- 大きな行政区の単位 教区をまとめる人→司教さん
- 司教さんが責任者の教会→大聖堂
- 教区内にある小さな行政区の単位 小教区をまとめる人→司祭さん
- 司祭さんが責任者の教会→教会
図にするとこんな感じ!
今も教会に通っている人たちは、小教区ごとに旅行とかバザーとか勉強会とか、いろんな企画をしています。
ちょっと日本の町内会に似ています。
司教さんのいない大聖堂がある
これまでさんざん、司教さんがいる教会が大聖堂と言ってきました。
でも実は、司教さんがいない大聖堂があるのです。
???????
それはフランス語でコカテドラル(Cocathédrale)と呼びます。
「子供のカテドラル」という意味ではないです。「カテドラルと共存する」みたいな意味。
コカテドラルは、昔は司教さんのいた大聖堂です。
もともと司教座都市だったところがそうでなくなったとき、そこの大聖堂から司教さんはいなくなります。
教区の分け方が変わってしまったのが原因です。
司教さんがいなくなってしまった=その都市の大聖堂が本当の意味での大聖堂ではなくなってしまった、ということです。
それで普通の教会になってしまったのです。
それをコカテドラルと呼びます。
カテドラという司教座(家具としての椅子)は置いてあるけれども、司教さんはそこにはもういないのです。
ちなみにフランス(海外県含む)には103個の大聖堂(カテドラル)
そしてローマ法王庁から正式に認められた11個のコカテドラルがあるそうです。
出典 https://fr.wikipedia.org/wiki/Liste_des_cath%C3%A9drales_de_France
まとめ
ポイントは
- 大聖堂は教会の1つ
- 大聖堂は「大きい聖堂」だから「大聖堂」なのではありません
- カテドラという司教さんの椅子があるから、つまり、司教さんがいる「司教座教会」だから大聖堂(カテドラル)なのです。
- 通常「教会」と呼ぶところは、司教さんの部下レベルにあたる司祭さんが仕切っています
こういう知識もっていると、大聖堂や教会を見て理解できる幅がグッと広くなります。
フランス観光あるいはヨーロッパ観光がさらに楽しくなります。
でも、大聖堂が何か忘れちゃってもOK。
イーノーは頭で理解する以上に「見て楽しむ」ことのほうが大切だと思います。
最後までお読みくださって、ありがとうございました。
Merci 💖 メルシー
イーノさま
なるほど、そうなんですね!
パリの大聖堂ノートルダムの火災にはショックを受けました。修復に携わっている方、パリの住民の方、それぞれいろんな思いを抱かれていることと思います。。
ガミーラさま
コメント大変ありがとうございます。
パリのノートルダム大聖堂の火災翌日、状況を見に行きました。
教会に行く人の少ない現代でも、ノートルダムの変わり果てた姿を見る人々のまなざしに、何か痛切な痛みを感じ取りました。
修復作業は着々と進んでおり、2024年の春には中に入れるようになるそうです。
イーノーさま、修復は、パリオリンピックには間に合うのですね。すごいスピードですね。その頃には、パリもまた別の姿を見せてくれるのかと、期待してます!
ガミーラさま
そうなんです。5年で修復というありえないスピードです。しかし、2024年で修復完了ではなく、まだまだ続くはずです。
一日も早く、あの素晴らしいバラ窓を再度見たいものです。
コメントありがとうございます。
カトリックの教会がカテドラルですよね?
ニ-ちゃん様へ
ご質問ありがとうございます。
フランス語のウィキペディアhttps://fr.wikipedia.org/wiki/Cath%C3%A9drale
には、
プロテスタントでもルタ―派、聖公会はカテドラルがあると書いてあります。
パリにある、アメリカンチャ-チの一つはカテドラルと名乗っています。
カテドラルは司教座のある教会のことです。
カトリックにも普通の教会もあります。それはカテドラルとは呼びません。
お答えになっていますでしょうか?
イ-ノ-の投稿をお読みくださり、大変ありがとうございます。
イ-ノ-